研究概要 |
新生児膵ランゲルハンス島(以下ラ島)は成人ラ島に比し増殖能を有すると推察される.本年度は,このような特徴を持つ新生児ラ島の移植の可能性を,pureな新生児ラ島の採取方法とその内分泌能を中心に実験的検討を行った.実験動物には生後1〜2日目にゴ-ルデンハムスタ-を用いた.まずハムスタ-を断頭後,膵を摘出し細切,さらにコラゲナ-ゼ処理を行い培養を行った.培地は10%牛胎児血清を添加したRPMIー1640を用い,毎日培地交換を行うことで,7日から10日後には,形態学的に成熟ハムスタ-膵より分離したラ島とほぼ同様のラ島が得られた.得られたラ島の組織学的検索では,H.E.染色で細胞変性や核の濃染像などもみられず,ABC法によるInsulinやglucagon染色では,β細胞やα細胞も成熟ラ島と同様の配列を示した. グルコ-ス負荷によるインスリン分泌能をみると,分離後3,7,14日目の基礎分泌量はそれぞれ,1.43±0.43,14.61±3.24,91.35±17.07 μU/10 islets/60minと培養日数が進むにつれ,著明な増加を示した.一方,300mg/dl濃度のグルコ-ス負荷時におけるスンスリン分泌能は,それぞれ,3.34±0.49,73.40±11.35,197.00±18.02,μU/10 islets/60minと培養日数が進むにつれて増加し,その値も基礎分泌量の2ー3倍と,成熟ラ島に近い値を示した. 今後,より詳細なラ島のviabilityを検索するために,ラ島のインスリン含有量やDNA含有量を測定し,さらに ^3Hーチミジンでラベルしたオ-トラジオグラフィ-法にて,ラ島の複製能を検討する予定である.さらに腎の複膜下への移植実験で,その移植効果についても追試の予定である.
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