研究概要 |
新生児膵ランゲルハンス島(以下ラ島)は,成人ラ島に比し増殖能を有すると推察される.平成2年度では,このような特徴を持つ新生児ラ島の移植の可能性を,pureな新生児ラ島の採取方法とその内分泌能を中心に実験的検討を行った.その結果,一週間の培養によって形態学的にも組織学的にも,またグルコース刺激によるインスリン分泌能からみた生物学的機能も,成熟ラ島とほぼ同等のラ島が得られることを示した.平成3年度では,より正確なラ島のviabilityの検索のため,ラ島のインスリン含有量とDNA含有量を測定し,より詳細な内分泌機能の検討を試みた.インスリン含有量やDNA含有量は培養によって徐々に増加し,その値はいずれも,培養約5週前後でplateauに達することが判明した. 本年度は,BrdUrdを用いて求めたlabeling indexの検討と,移植実験を試みた.その結果,新生児ラ島のlabeling indexは,対照の成熟ラ島の10-15倍と,明かに高値を示し,その増殖力の高さがうかがえた. また,細切した新生児膵をSTZ誘発糖尿病ヌードマウスの腎被膜下に移植した実験では,血糖値は生物学的機能が成熟ラ島の機能に達する約4〜5週目頃より低下がみられ,6週目以降には正常な血糖値に復し,移植後,新生児ラ島は移植部位で増殖し,移植効果を発揮することが類推された.また,移植側の腎摘によって,再び血糖値は上昇した.腎被膜下へ移植された膵組織の,ABC法によるインスリン及びグルカゴン染色では,それぞれ茶褐色に染まるB細胞及びA細胞を認めた.
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