研究概要 |
化学発癌剤のNーmethylーN'ーnitroーNーnitrosoguanidine(以下MNNG)投与開始前及び投与中に摘脾し、その発癌に対する影響について検討し、新しい知見を得たので報告する。 <対象と方法>約150gのWistar系雄性ラットに、MNNG水溶液を飲料水として80μg/ml,100μg/ml,120μg/mlの3種の濃度を作成し、各々20匹に飲ませた。摘脾による発癌率の差を検討するため各群を、Sham operationの群(以下Sham群)、投与開始前に摘脾する群(以下4M摘脾群)の4群各5匹に分類し、対照群として3匹に水道水を飲ませた。 投与後44週で屠殺し、胃での発癌個数、大きさ、及び病理組織像をHE染色で検討した。 <成績>(1)胃癌発癌数は、80μg/mlでは、Sham群2/5,摘脾群2/4,2M摘脾群3/5,4M摘脾群3/4,と4M摘脾群で高率であった。100μg/mlでは、各群2/5,1/5,2/5,3/5; 120μg/mlでは、各群2/5,1/4,3/5,3/5であった。全体では、各群6/15(40%),4/13(31%),8/15(53%),9/14(64%)と4M摘脾群で高値であった。(2)癌腫は、Sham群6個、4.0±2.0mm,摘脾群5個、11.4±14.4mm,2M摘脾群9個、5.2±3.7mm,4M摘脾群11個、4.9±2.4mmと、摘脾群で最大径が大きいが、4M摘脾群で癌腫の個数は多かった。(3)病理組織学的深達度は、Sham群sm以内(3),pm以上(3),摘脾群sm以内(2),pm以上(3),2M摘脾群sm以内(5),pm以上(4),4M摘脾群sm以内(10),pm以上(1)と4M摘脾群では浅い癌腫が多かった。 <まとめ>2M摘脾群、4M摘脾群で、Sham群及び摘脾群より発癌率が高値を示し、浅い癌腫が多かったことは、投与中、摘脾することにより、発癌性が高くなる要因の存在することが示唆された。
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