1.研究目的:膵・胆管合流異常モデルを作製して、膵液の胆管内逆流に伴う胆道の組織学的変化について検討した。 2.方法:体重2.0〜4.0Kgのシャムネコ13匹に対して、マイクロサ-ジェリ-手技を用いて膵管と胆管とを吻合し、これを膵・胆管合流異常モデルとした(吻合群)。膵管ならびに総胆管の剥離操作のみを行った6例を対照として、術後3カ月から2年3カ月目に犠牲剖検を行い、総胆管の拡張程度、胆嚢ならびに総胆管粘膜の組織学的変化について、生物顕微鏡、走査電子顕微鏡を用いて検索した。 3.結果:(1)胆嚢内の胆汁中アミラ-ゼ値は、対照群が129±88Uであったのに対して吻合群では36106±29369Uと有意に高値を示し、膵液の胆道内逆流が証明された。 (2)総胆管の拡張程度については、対象群が3.1±0.8mmであったのに対して、吻合群は2.8±0.9mmと拡張はみられなかった。このことより、膵液の胆管内逆流は胆管の拡張には関与しないことが証明された。 (3)組織学的には、吻合群において胆嚢の筋層ならびに線維膜の肥厚と粘膜の過形成変化が著明に認められた。総胆管においても粘膜上皮の過形成変化が認められたが胆嚢に比してその変化は軽度であった。また、PAS染色陽性細胞が2例に認められ、PAS陽性の粘液線の出現を8例に認めた。これらの変化は対象群では見られなかった。走査電顕では、粘膜の凸凹が強く粗造で細胞間隙が広くなり個々の細胞は大小不同が見られ、microvilliは短くなっていた。 4.今後の研究の展開に関する計画:平成2年度における研究計画は予定通りに進行したが、この結果をさらに進展させて、胆道癌の発生を得たいと考えている。
|