1.研究目的:胆管拡張のない膵・胆管合流異常では、胆嚢癌の合併する率が30%以上と高率である。それ故、この原因を解明する目的で膵・胆管合流異常の実験モデルを作製し、膵液の胆嚢内逆流が胆嚢粘膜に及ぼす影響について組織学的に検討を加える。 2.方法:4.0kg前後の成猫を全身麻酔下に開腹し、胆管と膵管とをマイクロサ-ジェリ-の手技を用いて側々吻合した。この方法により膵液と胆汁とは膵管ならびに胆管内において混合するので、これを膵・胆管合流異常の実験モデルとした。 術後1年以上を経過した例の胆嚢の組織学的変化について、生物顕微鏡、電子顕微鏡ならびに走査顕微鏡を用いて検討した。なお、膵管ならびに総胆管を剥離したのみの例を対照群とした。 3.結果:40匹に対して膵・胆管合流異常モデル手術を施行した。対照手術施行例は6例であった。術後1年以上を経過した膵・胆管合流異常モデル手術例は8例、対照群は3例と未だ少ないが、これらの例において以下の結果を得た。 (1)胆嚢の筋層ならびに線維層の著明な肥厚と、粘膜の過形成性変化が8例全例において認められた。これらの変化は対照群では認められなかった。 (2)PAS陽性の粘液腺の出現が膵・胆管合流異常モデル手術8例全例に認められ、このうちの2例にPAS染色陽性細胞が認められた。 (3)走査電顕では粘膜は粗造で凹凸が強く、細胞間隙も広くなっており、個々の細胞は大小不同がみられmicrovilliは短小化していた。
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