1、我々はまず、特異的ラジオイムノアッセイによるイヌPYYの測定系を確立し、食事負荷試験ならびに経結腸的脂肪投与試験における血中PYY値の変動を観察した。また、イヌにおいて、胆汁酸の結腸内投与による血中PYY値の上昇と膵外分泌の抑制を同時に観察し、膵外分泌機能が内因性のPYYにより抑制されることが示唆された。さらに、十二指腸内への脂肪負荷後の血中PYY値の推移を、CCK受容体拮抗剤であるいはアトロピン静脈内投与下に施行し、PYYの分泌には、内因性CCKならびに副交感神経による調節が関与しないことを観察し、報告した。 2、次にヒトにおいて、結腸切除術前後における血中PYY値の変動の比較、ならびに内因性PYYの胃酸分泌や膵外分泌に及ぼす影響を研究するため、ヒトにおけるPYYの測定を試みているが、現在のところその測定系の確立に難渋している。事実イヌ、ラット等の実験動物の血中PYYを測定した報告は数多く認められるが、ヒトにおいて血中PYYを満足に測定し得たという報告は、世界的にもほとんど認められないのが現状である。現在我々は、ヒトにおける血中PYYの特異的ラジオイムノアッセイによる測定系を確立するため、抗体の種類の選択、試料の抽出方法、各種条件等に関し、試行錯誤している段階である。また、同時に臨床における結腸切除症例数を蓄積しつつあり、術前術後における脂肪負荷試験を施行し、試料をPYY測定用に保存している。従って、ヒトにおけるPYYの測定系が確立されれば、本研究は飛躍的に進展するものと思われる。さらにヒトにおけるPYY値の胃液ならびに膵外分泌に及ぼす影響についても今後研究を進めていく計画である。
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