小腸移植の臨床応用を実現していくためには、現在地の臓器移植(腎、肝、心、膵など)で極めて有効なサイクロスポリンでは不十分で、サイクロスポリンを核とした多剤併用療法が試みられているが、臨床例での長期生存は難しいのが現状である。そこでサイクロスポリンと作用機序は類似するが薬理作用の強力なFK506が期待され、最近欧米特にピッツバ-グで臨床応用が試みられつつある。我々はこのFK506の小腸移植における至適投与法を検討する目的と、カルシウム拮抗剤を併用することによりFK506とのsynergisticな効果によりの作用を増強しFK506の必要量を減らし副作用の発現を抑制する目的で以上の研究を進めてきた。 まずinbred rat strainを用いたfully allogeneicな組合せとしてWKA(ウイスタ-ラット:RT1^k)からLEW(ルイスラット:RT1^1)の組合せを用いたがこの組合せは小腸移植ではかつて報告がなかったため、この系を確立されるため15cmのWKAの空腸をLEWにThiry vella loopとして異所性移植を行い組織学的に8ー10日目に拒絶反応が起きることを確認。更に15cmのWKA空腸をLEWにinterpositionした群では術後10ー12日目に全例が拒絶反応により死亡し、Allogeneicな組あわせとして良好なモデルであることが判明した。またコントロ-ルとしてLEWからLEWに空腸15cmをsyngeneicに移植しinterpositionした群では全例長期生存を得た。現在FK506投与群をスタ-トしたところだがpreliminaryなstudyでは15cmのgraftでは0.5mg/day筋注2週間投与で良好な免疫抑制が得られている。今後この投与量を減らしてカルシウム拮抗剤との併用を進めていく方針である。
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