小腸移植の最大の問題点は免疫抑制であり、強力な免疫抑制剤FK506の開発により、小腸移植の臨床応用が試みられるようになった。ピッツバーグではFK506とステロイドの併用で約60例施行されたが、2年生着率が50%以下であり、免疫抑制の問題は解決されていない。またFK506は副作用として腎障害、高血糖、食欲低下などがあり、また安全域が比較的狭いといわれており、他剤との併用により、効果の増強とともに投与量を少なくする工夫も必要である。FK506はciclosporineと同様にカルシウムdependentな免疫抑制剤であり、カルシウム拮抗剤との併用が期待されるため、Calmodulin阻害剤であるTrifluoperazine(TFP)との併用効果を検討した。 WKAMラツト(RT1^u)より20cmの空腸Graftを採取、Lewisラツト(RT1^l)に異所性に移植し、10日目に再開腹して術中所見および病理学的に生着を判定した。FK-506単独投与群では0.3mg/kg以下では全例拒絶されたが、0.5mg/kg以上では全例吻合可能で、組織学的にも拒絶反応は抑制され、急性拒絶反応の抑制にはFK506単独では0.5mg/kg以上の投与が必要であった。FK-506 0.5mg/kg+TFP 5、10、20mg/kg各併用群では、TFPの副作用と思われる呼吸抑制や食欲低下により10日以前に死亡し、TFPは5mg/kg以上の投与は不可能であった。FI-506 0.3mg/kg+TFP 3mg/kg併用群では吻合可能で急性拒絶反応は抑制されていた。なおGVHDは全例認められなかった。また術後10日目の病理学的所見ではFK506 0.3+TFP3mg/kg/day群ではFK506 0.5mg単独投与群と同様の所見であり、FK506 0.3mg単独投与群に比して、明らかに改善がみられた。 以上の結果から、FK-506とTFPの併用は、小腸移植における免疫抑制法としての相乗効果がみられており、有効な併用療法として期待される。
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