研究概要 |
天然に存在し特定の細胞への指向性のない多糖体pullulan(分子量:5万)にコレステリル基を導入したコレステロ-ルpullulan(CHP)と更に,CHpに1ーaminoーlactoseを導入したlacーCHPを用いて,ラット肝癌細胞(AH66)ヒト肝癌細胞(HuH7)のin vitroにおける取り込みを検討した。また正常ラット分離肝実質細胞,腹腔マクロファ-ジについても検討した。投与後1時間ではその差は顕著でなかったが,3時間ではAH66でlacーCHPはCHPの約2.9倍(p<0.01),HuH7では約4.4倍(p<0.01)とlーaminoーlactoseの導入により著明なリポソ-ムの癌細胞内への取り込みの上昇が認められた。しかし肝実質細胞においては有意差は認められなかった。腹腔マクロファ-ジでは3時間でlacーCHPはCHPの1.5倍であった。次に抗癌剤であるアドリアマイシンをリポソ-ムに封入してAH66に対する抗癌作用を検討したが,lacーCHPは最も有効であった。 in vitroの結果を踏まえ,in vivoの実験を行った。8週齢のヌ-ドマウスの大腿部下にAH66細胞懸濁液2×10^5/100μlを移植し,移植後14日目に実験に使用した。 ^3Hでリポソ-ムを標識したCHP,lacーCHPを尾静脈より投与し,30分後に屠殺し腫瘍部および肝,腎,脾,心,肺を摘出し,各組織1gあたりの取り込みを液体シンチレ-ションカウンタ-で測定した。その結果,腫瘍部ではlacーCHPの取り込みはCHPの1.7倍と有意の増加を認めた。臓器分布は肝,脾,肺の順で取り込みが高く,特に肝臓においては顕著であった。更にリポソ-ムの粒子径による取り込みの差異を検討したが,平均粒子径350nmに比較し50nmでは腫瘍部の取り込みが増加し,逆に脾,肺では減少した。
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