研究概要 |
1.微量金属成分・有機成分の分析…無機成分は原子吸光光度計にて分析した。(1)炭酸カルシウム胆石33例について検討したものでは,化学成分の中で最も多いものはカルシウムであり平均31.2%,炭酸カルシウムに換算すると胆石重量の77.8%であった。他の平均はNa0.66%,K0.07%,Mgは0.09%であった。アラゴナイト形(あられ石)が100%を占める8例ではMgは平均0.025%であり,低い傾向にあった。一方,カルサイト(方解石)分が多い症例では,Mgが平均より多かった。(2)膵石例はカルサイト形が多いが,その中でアラゴナイト成分が多く含まれている例では,胆石同様にMgが極端に少なかった。(3)炭酸カルシウム胆石例には有機物が平均17.5%含まれていた。2.炭酸カルシウムの合成実験…市販の泌降性炭酸カルシウムをけん濁液とし,それに炭酸ガスを通じて溶解させ,この濾液を37℃下で進続攪拌し,炭酸ガスを駆遂させながら,炭酸カルシウムを泌澱させた。開始時の母液のCa^<2+>濃度が100ー140ppmのときはアラゴナイト(あられ石)のみが析出した。しかしCa^<2+>濃度が増加するに伴いアラゴナイトは急激に減少し,240ppm以上では0〜15%となった。これに対してカルサイトとバテライトは増加し,Ca^<2+>が200〜240ppm以上では両者が結晶形組成の40〜50%を含めた。牛胆汁末の添加は,泌澱を抑制した。200mg1lすなわち正常胆汁の1/500濃度の時にはじめて泌澱が生じてきたが,カルサイト形(方解石)のみであった。又,Mg^<2+>の添加で,アラゴナイトのみが泌澱した。3.アラゴナイト形生成に影響を及ぼす因子…Mg^<2+>イオン,胆汁成分,有機成分の存在などが考えられた。
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