1.目的:主として拡張型心筋症へのDynamic Cardiomyoplasty の臨床応用を想定した実験を行う。薬剤誘発心不全犬を作製し、これに自家広背筋によるDynamic Cardiomyoplasty(wrapping法)を行い、心収縮に同期収縮させて心機能補助効果を検討する。 2.方法:実験には雑種成犬を用いた。手術方法は、左広背筋を神経、血管とも温存した有茎筋肉弁とし、この起始部に刺激電極を縫着する。筋肉弁を左第二肋骨切除部から胸腔内に誘導し、心拍動下に左室側壁から時計回りに心室全体に巻き縫着する。心電図、大動脈圧、左室圧、上行大動脈流量をモニタリングしながらpropranololを静注し、脈拍、大動脈圧が約30%低下し安定したところを薬剤誘発心不全状態とする。この状態で心電図R波をtriggerとするburst電気刺激で広背筋を心収縮に同期収縮させる。広背筋の疲労軽減のため同期収縮は10秒に1回とし6回までを計測する。 3.結果:propranolol投与により心拍数は平均90から60に減少し、大動脈圧は平均88mmHgから62mmHgへと29%低下した。左室拡張終期圧に有意な変化は認められなかった。この状態では電気刺激を開始すると刺激時の大動脈と左室収縮期圧の圧上昇率は各々36%、40%であった。大動脈peak flow値では1.7倍の増加を認めた。 4.考察:薬剤誘発心不全状態に対する有茎広背筋弁を用いたDynamic cardiomyoplasty(wrapping法)による左心機能補助の可能性を示した。今後、長期電気刺激によって疲労耐性を獲得した広背筋を用いて連続刺激による左心機能補助効果を検討したい。
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