研究概要 |
左心補助心臓駆動方式を明確にするため,両心に補助心臓を装着し,両心補助心臓駆動モデルとし,左室・右室同時駆動時と左室・右室交互駆動時とで比較検討した。 雑種成犬を使用した。気管内挿管全身麻酔下に仰臥位にて左大腿動脈より室血管外水分量測定用カテ-テルを挿入した。脱血カニュ-レを右心房・左心房に挿入し,送血カニュ-レを肺動脈幹・上行大動脈にそれぞれ挿入した。これらカニュ-レを空気駆動式サック型血液ポンプ(容量15ml:日本ゼオン社製)にそれぞれ接続し,右心補助心臓,左心補助心臓とした。両心補助心臓開始後,血行動態の安定した30分後に自然心を電気的に心室細動とし,左室・右室同時駆動,左室・右室交互駆動をそれぞれ1時間行ない,各種測定及び採血を行った。肺血管外水分量の測定は日本光電社製Lung Water Computer(MTVー1100)を用いて行った。注入ラインは中枢に向けた肺動脈幹においた。指示薬希釈曲線は大腿動脈における温度変化及びナトリウム濃度の変化によって生ずる血液の電気伝導度の変化によって作成された。左心補助心臓及び右心補助心臓それぞれに付いている電磁血流量計によりそれぞれのバイパス流量を測定した。肺血管外水分量は左室・右室同時駆動群と左室・右室交互駆動群とでは1時間駆動時においては有意差はみられなかった。自然心拍動時に比べると両群とも有意な増加を示した。肺のガス交換能を比較するために動脈血酵素分圧を分析した。両心補助心臓駆動時は自然心拍動時と比較してやや低い値を示したが,同時駆動群と交互駆動群との間では統計学的有意差はみられなかった。左心補助心臓,右心補助心臓の拍出量は同時駆動群と交互怪寿群とでは有意差はみられなかった。以上より左室右室交互駆動方式は肺循環に対して特に悪い影響を及ぼさないと考えられた。
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