研究概要 |
胎生23週間から58歳の、外科手術症例72例により得た胸腺を初代培養した。胸腺ドナーを年齢により分類し、胎生期から2歳未満までを1群、2歳から10歳未満までを2群、10歳から20歳未満を3群、20歳以上を4群とした。胸腺上皮は、1・2群では2週終わり頃まではわずかに増殖するが、3.4群では1週を過ぎるとほとんど増殖しなかった。3・4群では5週までに、1・2群も6週頃までには上皮が脱落して、すべてfibroblastとなった。培養胸腺上皮細胞を倒立位相差顕微鏡で観察した。胸腺上皮細胞は、小さな胞体で集簇して敷石状に見えるタイプ1と、広がった胞体でばらばらに定着するタイプ2、および大きな胞体で緊密に接して増殖するタイプ3の3種類がみられた。ケラチンとビメンチンをDAB法とALP法で二重染色した。タイプ1では比較的濃く、タイプ3では比較的薄くケラチンが発色するものが多かった。タイプ2の細胞は、褐色のケラチン陽性のものと赤色のビメンチン陽性のものがみられた。胸腺上皮細胞の2次培養を行なった。胸腺上皮細胞は、初期に細胞数が著明に減少した。1・2群では、培養2日め頃から軽度増殖したが、3・4群では3-4日めになってはじめて増殖がみられた。しかしその程度は極めて軽微であった。骨髄単核細胞からCD4,CD8,CD3を発現している細胞を除去して、残ったCD4^-8^-3^-分画に培養上清を添加後4日間培養しフローサイトメトリーにて測定し、リンパ球系・赤血球系・顆粒球系・芽球系の各系列細胞の構成比率を検討した。リンパ球系では、4群はcontrolおよび1・2・3群より有意に減少した。顆粒球系ではcontrolよりやや減少し、芽球系ではあまり影響はみられなかった。リンパ球系細胞のCD4・CD8・CD3発現に及ぼす培養上清の影響を検討すると、CD4^-8^-3^+subsetは、1・2群ではcontrolに比して増加する傾向がみられた。CD4^+8^-3^+subsetは、1・2群ではcontrolより増加し、3・4群ではcontrolと差がなかった。
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