研究概要 |
ウイスタ-系ラット(体重:300g前後)をもちいて全身麻酔下に肺を摘出し、A)コントロ-ル群、B)ヘパリン生食内室温6時間保存群、C)ヘパリン生食内37℃6時間保存群、D)EP_3液内37℃6時間保存群の4群に分け、各群で7bloch(左上葉、下葉、肺門、右上葉、中葉、下葉、肺門)の標本を作成し、Schurerらの方法でanionic sitesを染色した。これを透過型電子顕微鏡で観察し、各標本を15410倍で3枚ずつ撮影した画像を画像解析装置(Hard:NEC.9801VX,Soft:Nikon Cosmozone)を用いて処理しanionic siteを計測、密度を算出した。またtwo way ANOVA TukeyーKramer法により各群間での有位差を検討した。Schurerのanionic sites染色法を用い処理した結果、全ての標本でanionic sitesが基底膜上の黒点として観察できた。同一個体での密度の部位による差異を一部に認めた。また、各群間での密度は、control群に比しヘパリン生食内室温6時保存群、37℃6時間保存群およびEP_3液内37℃6時間保存群で有意(p<0.05)に高かった。 当初予想された結果は、charge barrier(heparan sulfate proteogly can:HSP)は劣悪な保存状態ではdegradationをきたしanionic sitesが減少しalbuminにたいするpermeabilityが昂進し肺水腫を惹起すると考えたが、逆にanionic sitesは増加すると言う結果になった。これはanionic sitesの本体であるHSPが変性を起こし、その側鎖が解離してanionic sitesが増加した結果とも推測される。しかし、実際の移植では血液の再潅流と言う因子が加わり血液中のHSP分解酵素(erastase,cathepsin G etc.)により分解されてしまい、このanionic sitesも減少してしまうことも予想される。なにぶん数も少なく、また以上のことを考慮すると今回の実験で得られた結果から早計に結論を下すべきでなく、今後とも実験をかさねる必要があると考えられた。
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