研究概要 |
内胸動脈(IMA)の剥離の方法により2群に分け、IMAの成長性を検討した。体重約30Kgの幼豚を用い全身麻酔下で胸骨正中切開し実験を行なった。IMAをpedicleとした群(I群)とIMAの周囲の組織をすべて除去した群(II群)に分けた。左IMAを約10cm剥離し、中枢及び末梢側を切離しfreeとした。上行大動脈を3mmパンチで穴を開け7ー0糸にてIMAを吻合した。左冠動脈前下行枝(LAD)に1cm間隔で2本、糸をかけLADを切開し、チュ-ブを入れ鎖骨下動脈より冠潅流を行なった。糸の間の冠動脈を縦切開し、搏動心のままでIMAの末梢側と冠動脈を8ー0糸にて吻合した。吻合後中枢側糸を結紮した。搏動心のままで手術を行なう為に冠血流が不充分であると心筋梗塞を併発した。手術完了時生存したものは12頭中5頭(I群)であった。3頭が出血・梗塞で1・3・4日に死亡した。1頭のIMAは血栓性閉塞した。2頭は開存していた。残る2頭は31,40日目に栄養不良の為に死亡した。造影でIMAは開存していた。体重は31→32,30→31Kgと増加は不良であった。長さは8.3→8.5cm,8.6→8.7cmに、太さは3点の平均で2.3→2.4,2.2→2.1mmと殆ど変化していなかった。組織学的には内膜肥厚は軽度でinjuryもみられなかった。II群にも同様の方法で実験した。6頭中、実験終了まで生存したものは2頭であった。栄養不良の為に20,26日目に死亡した。体重は30→30,29→30Kgへの変化であり、1頭のIMAは閉塞していた。開存例のIMAの長さは8.0→7.9cmに、太さは2.2→0.8mmと細く、壁不整が著明であった。組織学的に内膜の肥厚、傷害、血栓がみられた。外膜の線維性肥厚が認められた。両群共に長期生存を得ることができなかった為に正確な結論を出すことはできないが、短期の結果としてはI群の周囲組織をくっつけたpedicleとして用いたfreeのIMAの方が良好と考えられた。
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