脳動脈瘤発生に関する流体力学的検討を、われわれの開発した脳動脈瘤誘発モデルラットの摘出脳血管分岐部、および生体での脳底部脳血管分岐部を用いて行った。摘出脳血管分岐部にラテックス粒子を定常流で流し、高速拡大シネ撮影を行った。血管分岐部尖端内膜隆起の遠位端に流れの停滞を認め、初期動脈瘤閉口部近位側では急速な減速のあることより、大きな圧が加わっていることが示唆された。また動脈瘤壁内では流れが遅く、動脈瘤閉口部遠位端ではずり応力が最大であることを示した。さらに生体での脳底部脳血管分岐部露出法を考案し、同様に経静脈的に蛍光粒子を注入し、蛍光顕微鏡下に同部の流れを観察した。動脈瘤の発生に伴い、血管分岐部の近位側および分岐側に乱流が生じ、動脈瘤の増大に伴いその程度を増やすことが確認された。これらの結果から、血流の停滞、ずり応力の増大などが内膜障害をもたらし、動脈瘤の初期病変を起こさせる。動脈瘤初期病変としての陥凹が生じることにより、さらに乱流が生じて内膜障害をさらに増悪させると考えられる。 さらに脳動脈瘤発生の第一段階である内皮細胞障害と内皮細胞の再生、増殖能を検討することが必要と思われるため、内皮細胞の増殖能につき、in vitroの実験を行った。自然発症高血圧ラットの大動脈より内皮細胞を採取し、大量培養を行った培養液よりactive fractionを決定し、さらにその分画をwestern blot法により既知の増殖因子と比較した。培養液上清中にはPDCFの有意の上昇を認めた。新たな増殖因子と考えられる活性蛋白の存在は検知できなかった。
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