研究概要 |
臨床用MRS装置では^1Hスペクトロスコピ-として,脳神経細胞内アミノ酸,神経伝達物質(GABA),乳酸等が計測され,^<31>Pーspectroscopyーとして脳内リン酸化合物(リン酸クレアチン,ATP,無機リン等)を測定することが可能である。今回実験用inーvitro spectroscopy(Varian社製XL200及びXL400,それゞれ4,7Tesla,9,4Tesla)を用いて,未熟脳での虚血に対する耐性能を知る目的で,幼若大の脳において虚血巣を作製しspectroscopyにて脳代謝の支化を測定した。(方法)全身麻酔下に,開胸を行い生後1ケ月,3ケ月,1年目の3群の幼若犬において無名動脈と左鎖骨動脈をclampし,虚血脳を作製した後,^<31>Pーspectroscopyを用いて脳代謝の変化を測定し,幼若脳の特徴について検討した。(結果)虚血脳においては,βーATP ratioは3群において有意差は認めなかったが,ATPの回復は幼若であればある程著明であった。しかしPCr/Piの比は3群において有意差を認めなかった。又EEGの変化では,成犬では殆んどαー波の回復は認めなかったが,幼若脳においては^<31>PーNMRの回復に比べて緩徐であったがほゞ正常に回復した。又EEGの変化と,^<31>PーNMRの所見とは平行した。(結論)以上の結果より,^<31>PーNMR spectroscopyは,in vivoにおいて脳代謝の変化を継時的に測定することが可能であり,虚血後においてはATPの回復が幼若脳で著明であり,EEGの回復も幼若脳において緩徐ではあるが回復が認められたことより,幼若脳においては虚血に対する耐性や回復能は成熟脳に比べ優れていることが判明した.
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