研究概要 |
一過性脳虚血後の脳組織エネルギ-代謝の可逆性,可塑性は脳組織の成熟度と関連があるといわれている。しかし成熟脳および未熟脳において,脳虚血後の回復について定量的に比較することは,個体間の脳障害の程度を一定にすることが難しいため容易ではない。今回我々は全脳虚血モデルを用い, ^<31>PーMRSのシグナルをモニタ-することにより脳虚血の負荷を一定の程度に保つ方法で,生後1年(A群,nー41,3ケ月(B群,n=4),1ケ月(C群,n=4)の各群間でのリン酸エネルギ-代謝および脳波活動の回復過程を比較した。両側頸動脈,および椎骨動脈の一時的結紮に加え,20ml(kgの脱血による低血圧を負荷し,βーATPレベルを正常値の1/3に低下させ15分間維持した。血流再開後βーATPはコントロ-ル値を1とすると,B群では0.90±0.001,C群では0.97±0.004まで回復したのに対し,A群では0.71±0.05にとづまった(P<0.005)。PCrはB群0.91±0.01,C群0.94±0.04に対しA群0.59±0.12(P<0.01),PiはB群1.08±0.03,C群1.05±0.03に対し,A群1.36±0.13(P<0.05)といずれも生後1年の成熟犬で有意に回礎が不良であった。一方脳波では,A群では回復を認めなかった。またB群では,血流再開後4時間でわずかに回復の兆しを示したのに対し,C群では血流再開後1時間で回復を示しコントロ-ルの80%まで回復した。 未成熟群と成熟群との間で脳虚血からの回復に有意差を認め,かつ生後1ケ月群では3ケ月の群に比べ,可逆性,可塑性が良好な結果を示した。
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