研究概要 |
平成2年度の結果では、15分間の熱負荷を加えたラットの海馬では、熱負荷の90分後、8時間後および24時間後に熱ショック蛋白質(heat shock protein 70,HSP70)の発現が認められた。また、4ーvessel occlusionにより脳虚血を作製したラットの海馬では8分間の虚血では、HSP70の発現が認められたが、15分間の虚血ではHSP70の発現は認められなかった。 この結果を踏まえて、本年度は熱負荷8および24時間後、8分間の脳虚血・血流訪開24時間後に、4ーvessel occlusionによる15分間の脳虚血を加え、血流再開7日後の病理組織変化を15分間の虚血のみの群と比較検討した。病理組織変化は、海馬CA1領域の組織1mm当りの神経細胞の数を算出した。正常群の神経細胞密度は、186.3±4.1(mean±SE),無処置で15分間の脳虚血群では、21.8±3.5/mmであった。熱負荷8時間後および24時間後に15分間の脳虚血を加えた群ではそれぞれ40.8±5.4/mm,38.2±4.2/mmであった。8分虚血・血流再開24時間後に15分間の虚血を加えた群では77.4±11.2/mmであった。 熱負荷および短時間の虚血負荷により、その後の脳虚血に対して保護効果が発揮されることが示された。熱負荷に比べて、短時間虚血の方が、HSP70の発現は強く、HSP70の発現と虚血耐性との間の相関が示唆された。
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