【目的】実験頭部外傷において神経細胞損傷にかかわる因子として局所糖代謝の重要性が指摘されている。我々は、超急性期から24時間までの変化に着目し、再現性にすぐれたfluid-percussion法にてラットに頭部外傷を作製し、経時的に2-Deoxy glucose (2-DG)法でlocal cerebral glucose utilization (LCGU)を測定した。 【方法】S-Dラット(雄350〜450gm)に抱水クロラールで麻酔し、左大腿動静脈にカテーテルを留置後、右側頭部にポリエチレンチューブを固定、fluid-percassion impact (平均5.0 atm)を加えた。ラットは受傷後、I群:15分(n=4)、II群:30分(n=3)、III群:45分(n=4)、IV群:60分(n=3)、V群:120分(n=3)、VI群:24時間(n=3)後に各々2-DGを投与した。optical density は受傷部、受傷部辺縁(rim)、両側皮質、海馬、視床、基底核、小脳虫部で計側し、Sokoloffの原法に従ってLCGUを計算し、次いで測定各部と小脳虫部とのdevsitygic(ratio)を算出した。 【結果】受傷直後挫傷部の2-DGの取り込みは低下しており、経過と共に更に低下し45分で最低となるが、1時間以降若干回復している。挫傷部と非挫傷部の境界領域のrimでは、2-DGの取り込みが受傷後45分〜1時間で著明に亢進し2時間でも続くが、24時間後では見られなくなる。小脳虫部との densityの比は、rimにおいて45分値が極端に上昇していた。 【結論】実験頭部外傷後のLCGUの変化は、虚血損傷と類似した経過をたどることより、頭部外傷後の脳代謝には虚血が深く関っていることが示唆された。
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