研究概要 |
成犬で自家動脈血を大槽内に2回注入して実験的脳血管攣縮モデルを作製した。初回自家血注入後7日目に脳血管写を施行して脳血管攣縮を確認後、経斜台的に攣縮脳底動脈を露出した。3種の酵素抑制剤、すなわち、Cキナ-ゼの触媒領域にあるATP結合部位に作用するHー7,Cキナ-ゼの調節領域に作用するカフフォスチンC、カルパインに作用するカルペプチンを、用量依存的に攣縮脳底動脈に局所的に投与して、その寛解度を観察した。Hー7とカルペプチンは用量依存的に攣縮脳底動脈を寛解させ、4mMEGTAによる寛解度を100%とした時のHー7およびカルペプチンの最大寛解度は夫々95.7±2.5%と86.8±7.2%であった。カルフォスチンCは用量依存的に攣縮脳底動脈を寛解させるものの、その最大寛解度は31.9±3.5%であった。しかし、攣縮脳底動脈を50%寛解させる17nMのカルペプチン投与後では、カルフォスチンCは単独投与時よりも有意に用量依存的に攣縮脳底動脈を寛解させ、その最大寛解度は65.2±2.0%であった。 一般にプロティンキナ-ゼのATP結合部位は構造上の類似性があり、この部に作用するHー7の選択性には問題がある。また本実験で用量依存的に用いたHー7の高濃度領域ではミオシン軽鎮キナ-ゼも抑制される。他方、カルフォスチンCとカルペプチンの効果を併せ考えると、静止状態ではCキナ-ゼの調節領域を不活化しているので、カルパインによりCキナ-ゼが限定分解される結果、カルフォスチンCの効果が減少し、カルペプチンによりCキナ-ゼの限定分解が抑制されて、Cキナ-ゼの調節領域が触媒領域を不活化して攣縮脳底動脈が寛解されるものと考えられる。このことは、カルペプチン投与後のカルフォスチンCの寛解効果が有意に上昇する事実よりも裏付けられるものと考えられる。
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