研究概要 |
自家動脈血を成犬大槽内に2回注入して脳血管攣縮モデルを、KClまたはセロトニンを成犬脳血管局所に投与して脳血管収縮モデルを作製し、脳血管内のμ-カルパインとカルパスタチン(カルパインの内因性阻害物質)の動向を両モデルで比較検討した。 1.μ-カルパインの動向は、μ-カルパインのpre-およびpost-autolysis formsに対する抗体を用いたimmunoblot法で検討した。脳血管攣縮群ではμ-カルパインは動脈血注入日より7日まで連続的に常に活性化された。脳血管収縮群では血管収縮の初期でμ-カルパインは活性化されたが、持続収縮期には活性化されなかった。 2.カルパスタチンの活性はカゼインを基質としたm-カルパインの活性を分光光度計により測定した。脳血管攣縮群では、動脈血注入日より7日までカルパスタチンの活性は有意に低下したのに反し、脳血管収縮群では時期の如何を問わず活性に変化が観察されなかった。従って、脳血管攣縮群におけるカルパスタチン活性の低下は、カルパインの活性化につながるものと考えられる。 以上の結果より、脳血管攣縮にカルパインの関与が考えられる。この実験結果は平成2,3年度の実験結果と符合するものである。すなわち、カルパインの選択的阻害剤であるカルペプチンの脳血管局所投与により、脳血管攣縮は用量依存的に緩解されるのに反し、脳血管収縮には無効であった(平成2年度)。平滑筋収縮に関与するa-平滑筋アクチン、ミオシン、デスミン、フィラミン、タリン、ビンクリン、a-アクチニンは何れも脳血管攣縮群では強い分解をうけるに反し、脳血管収縮群ではミオシン、フィラミン、タリン、a-アクチニンの軽度の分解がみられるに過ぎない(平成3年度)。この脳血管攣縮群で観察される蛋白質の強い分解はカルパインにより惹起されたものと考えられる。
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