研究概要 |
自家動脈血を成犬大槽内に2回注入して脳血管攣縮モデルを作製し、脳血管攣縮におけるカルパインの関与を検討すると同時に、KCIまたはセロトニンを成犬脳血管局所に投与して脳血管収縮モデルを作製し、両モデルにおけるカルパインの関与の相違から脳血管攣縮の特徴を検討して次の結果を得た。 1.μーカルパインのpre-およびpost-autolysisformsに対する杭体を用いたimmunoblotの結果、脳血管攣縮群ではμカルパインが常に活性化されるに反し、脳血管攣縮群では収縮初期でμーカルパインは恬性化されるが、持続収縮期には活性化されない。またカルパインの内因性阻害物質であるカルパスタチンの恬性を測定すると、脳血管攣縮群ではカルパスタチンの活性が低下するのに反し、脳血管収縮群では時期の如何を問わず恬性に変化が観察されない。従って脳血管攣縮群におけるカルパスタチン活性の低下は、カルパインの活性化につながると考えられる。 2.カルパインの選択的阻害剤があるカルペプチンを脳血管局所に投与すると、脳血管攣縮は用量依存的に緩解されるに反し、脳血管収縮には無効である。1,2の実験より脳血管攣縮におけるカルパインの関与が示唆される。 3.平滑筋収縮に関与するα-平滑筋アクチン、ミオシン、デスミン、フィラミン、タリン、ビンクリン、α-アクチニンの夫々の杭体を用いたimmunoblotでは、何れの蛋白質も脳血管攣縮群では強い分解が観察されるが、脳血管収縮群ではミオシン、フィラミン、タリン、α-アクチニンの軽度の分解が見られるにすぎない。 以上の結果より、平滑筋収縮に関与する蛋白質の分解は脳血管収縮と比較して脳血管攣縮では極めて強く、活性化カルパインによって惹起されるものと考えられる。このことが脳血管攣縮の治療抵抗性を示す主原因であると考えられる。
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