研究概要 |
人の骨粗鬆症は加齢に伴って生じるが、種々の原因によっても生じ、ステロイド剤の服用時に骨粗鬆症が生じることが知られている。そこで、ラットにデキサメサゾンを投与して、骨組織中のオステオカルシンのmRNAの発現を検索した。96匹のウイスター系成熟雌ラットを用いて、デキサメサゾン(DEX)1mg/kg、100mg/kgを腹腔内に1回投与した後、経時的に屠殺して、脛骨を摘出した。骨髄を除去した脛骨をホモジナイズしてオステオカルシンのcDNAプローブを用いてmRNAの発現をノーザンブロット法にて検索した。DEXの投与により、脛骨の中の細胞(骨芽細胞)のオステオカルシンmRNAの発現は著明に減少した。1mg/kgのDEXでは投与後72時間にて投与前の値に回復したが、100mg/kgのDEXでは投与後24時間にてオステオカルシンmRNAの発現が全く認められなくなり、投与後96時間でもDEXの効果が持続していてオステオカルシンmRNAの発現が全く認められなかった。この実験系を用いて、1,25(OH)_2D_3とそのアナログである 2β‐(3‐hydroxypropoxy)‐1,25(OH)_2D_3[ED‐71]を0.1μ/kgを経口で1回投与した後、前述の方法で脛骨の中のオステオカルシンmRNAの発現を検索した。脛骨の中の細胞(骨芽細胞)のオステオカルシンmRNAの発現は、1,25(OH)_2D_3の投与後6時間にて有意に増加した。一方、ED-71の投与では、投与後6時間にて有意に増加し、その後も高値を持続して、投与後7日でもまだ高値であった。1,25(OH)_2D_3とED-71の効果をin vitroの実験系においても検索した。骨芽細胞様細胞ROS17/2.8を、1,25(OH)_2D_3あるいはED-71を培養液中に加えて培養すると、ROS17/2.8細胞のオステオカルシンmRNAの発現は有意に増加することが認められた。以上のことからオステオカルシンは骨芽細胞によって産生され、1,25(OH)_2D_3あるいはED-71はその転写の段階で作用し、in vivoにおいても作用していることが判明した。
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