研究概要 |
生体内分解性高分子であるポリーLー乳酸を延伸して高い強度のロッドを作成し,これを家兎の皮下,骨髄内に埋入し強度変化,組織反応および長期における挙動(分解、吸収)を明かにした。37℃リン酸バッファ-中で、太さの大きいロッド程より長く強度が維持され,5mm径では3ヵ月でも60%の曲げ強度を維持した。皮下及び骨髄内での強度変化については,皮下ではバラツキが大きいものの,in vitroの結果とほゞ同様であった。骨髄内では皮下より劣化がやゝ早い傾向を示したが,その曲げ強度は,8週間人の皮質骨の曲げ強度以上を維持していた。曲げ強度は25週で失われていた。分子量の低下は早期より起こり,骨髄内,皮下,in vitroの順に低下率は大であった。重量変化は,1年で約20%減少,1年半で70%の減少を認めた。組織学的には,初期には比較的bio inertで,厚い介在性の骨形成をロット周囲に認め,1年以降分解による組織反応がみられ,1年半以後加速し,組織球による分解物の貧食像がみられた。従って2〜3年以上でこのロットは完全に吸収されるものと考えられ,強度においても,十分に人の関節周囲の骨を固定するに十分な強度を維持しており,すでに人の骨折に対し,一部臨床使用を開始している。すでに,家兎の下腿骨において,ポリ乳酸性スクリュ-による骨接合に成巧し,近く外国雑誌に掲載予定である。現在,成犬を用いて大腿骨の実験的骨接合術をプレ-トとスクリュ-にて開始しているが,尚,継続の予定である。将来,人の骨折のある程度が抜去を要しない生体内分解性のインプラントにより行われているものと確信している。
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