研究概要 |
金属性骨接合材料のもつ種々の欠点を克服するため,生体内分解性ポリマーであるポリ-L-乳酸より高強度の骨接合材(ロッド,スクリュー,プレート)が作製された。延仲率2.5倍,直径3.2mmのロッドの曲げ強度は240MPa,曲げ弾性率は13GPaと,これまでに報告されたPLLAの内で最も高い強度を有する。37℃燐酸バッファー中では,直径の大きいもの程より長く強度が保持された。またin vivoの研究では,家兎皮下に埋入したロッドは,in vitroの場合とほぼ同様の強度を保持したが,骨髄内では,やや低い傾向であったが有意差はみられなかった。分子量の減少は,in vitro,皮下,骨髄内の順に減少した。重量の減少は,52週で約22%,78週で約70%を示した。組織学的には,52週までは,明かな尖症反応や異物巨細胞による反応を認めなかったが,それ以後,次第に組織球の浸潤と盆食像がみられ,約2年〜2年半でその反応は最大となった。完全な吸収には3年以上を要すると考えられた。また,家兎の脛骨止位部の骨切りをスクリューにて固定した実験においては,金属製スクリューと,PLLAスクリューで固定した群との間には,骨片の転位率や骨癌含率に関して有意差は認められなかった。スクリュー先端部の骨形成は,PLLAスクリュー群の方が,より良好であった。さらに,プレートにて,家兎大腿骨々幹部の骨切りを固定した実験においても,金属製プレートとPLLAプレートとの間に骨癌含率に差はなく,25週以後において,PLLAプレート群の方が,骨強度や骨塩量において金属製プレートよりも有意に優れていた。以上の結果より,PLLA骨接合材は,骨内においても,ヒトの骨皮質の強度も上回る強度を約8週間維持するのでヒトの骨折(関節内,関節同囲骨折)の修後に十分応用しえると考えられた。
|