関節軟骨の欠損に対し、正常に近い軟骨再生が得られる可能性を求めて骨・骨膜を関節内軟骨欠損部に移植する実験モデルを作成し、組織学的検討を加えた。 実験モデルとして、雑種成犬をもちいバルビツレ-ト、ハロセン、笑気による全身麻酔下に行った。膝関節大腿骨内顆内側の骨膜を支配しつつ骨内に至る下行膝動静脈の分枝を血管柄として付けたまま骨・骨膜をノミをもちいて切り出した後、大腿ー膝蓋関節に作成した骨軟骨欠損部に移植固定した。また血管柄を付けず骨・骨膜を移植した群、欠損部を放置した群の3群を作成し比較した。移植骨片は径0.75または1.0mm田島式鋼線を使用して固定し、手術後プラスチックギプスによる固定を行い5日後に除去し自動運動を開始した。現在まで計8例の血管柄付きの実験モデルを作成し、そのうち3例を対照として作成した2群と共に術後3カ月で屠殺し、レントゲン学的、組織学的検索を行った。血管柄付き群では膝関節面ー軟骨欠損部に移植された骨付き骨膜は3例共生着し、肉眼的にも軟骨表面は円滑で軟骨様であった。組織学的には移植骨膜下層での硝子軟骨様組織の形成が確認された。また上層には微小血管が存在し、血管造影を行ったモデルでは血管中に造影剤の存在を認めた。他の2群では表面粗造となり光沢を持たず、移植した皮質骨が露出したものや結合織による模様組織の生成を認め、組織学的にも硝子軟骨の生成を示す所見はなかった。 現在、生成された硝子軟骨組織の進展と移植骨膜の血管の開存性等を確認するため長期モデルの飼育を継続中である。(同内容は、第23回中国・四国整形外科学会で第1報として発表した。)
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