本研究の第1の目的は血管柄付骨膜植在による関節軟骨欠損の再建の可能性についての研究である。雑種成犬の膝蓋大腿骨関節面に骨軟骨欠損を作成し同部に自家骨・骨膜移植を行い実験モデルとした。血管柄付群の術後8週例においては移植部は細胞間基質の膿染を認め硝子軟骨様組織の形成と思われる所見を得た。遊離移植の術後8週では移植骨膜の細胞の存在は確認されたが細胞間基質の形成は認めなかった。血管柄骨膜移植により関節軟骨欠損において硝子軟骨の再生が可能である。本研究の第2の目的は血管柄付同種関節移植に際して移植関節に対する免疫抑制剤サイクロスポリン(CyA)の免疫抑制療法中止後の長期成績について研究することである。主要組織適合抗原(MHC:Major histocompatibility complex)が明確であるラットを用いて膝関節のみを同所に移植する実験モデルを作成し、移植関節の機能について長期観察を行った。MHC Major mismatch間ではCya10mg/kg/dayを術後2〜4週間の短期投与で移植片と宿主間の骨癒合は早期に認められた。しかし、その後CyAの投与を中止すると、術後10週頃には病的骨折、関節不安定性を生じ関節機能は維持できない状態となった。CyAの短期投与では拒絶反応の発生を遅延させる効果は認められたが恒久的な免疫学的寛容は得られず移植関節は末梢血行の破綻が主原因である血管性拒絶を受け壊死に陥った。CyA5mg/kag/dayを連続投与すると骨、軟骨への拒絶は抑制可能であった。同種移植関節の機能維持には低濃度のCyAの連続投与が不可欠である。
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