研究概要 |
1.慢性関節リウマチ(RA)患者の滑膜における血管内皮細胞の活性化を知るために,血管内皮細胞上に発現されるICAMー1およびHLAーDQ抗原について免疫組織化学的観察を行い,正常滑膜と比較検討した.正常滑膜では血管内皮細胞はほとんどがflatで,high endothelial venule(HEV)と思われる血管は認められなかった.免疫組織化学的には,約半数の血管内皮細胞がICAMー1を発現していたが,RA患者の滑膜においてはHEVが数多く存在し,これらの血管はほとんど全てICAMー1を発現していた.また免疫電顕によるimmunoーgold法を用いた定量的解析によっても,正常血管内皮より多くのICAMー1が発現していることが判明した.これらのことは,RA滑膜においてICAMー1の発現増加が滑膜へのリンパ球浸潤を促進していることを示唆するものと思われた.一方,HLAーDQ抗原に関しては,正常およびRAのいずれの血管内皮細胞においてもその発現を認めず,更に検討を要する問題と思われた. 2.RAの実験モデルであるコラ-ゲン関節炎において,関節炎発症ラットより得られた抗II型コラ-ゲン抗体を未感作のSDラットに静脈内投与して受身移入関節炎を作製した.この関節炎における好中球の役割について,cylophosphamide(CY)および好中球を特異的に増加させる造血因子である顆粒球コロニ-形成刺激因子(GーCSF)を用いて,(1)CYによる白血球減少の関節炎発症におよぼす影響,(2)GーCSFによる好中球の特異的増加の関節炎発症におよぼす影響,(3)少量の抗体移入に対するGーCSFの関節炎発症促進効果について検討した.その結果,関節炎の発症には好中球の存在が必要であり,好中球の増加は関節炎の増強を促すことが判明した.このことは,好中球の粘着能等を阻害することによる関節炎治療の可能性を示唆するものであり,今後,抗adherence molecules抗体等による関節炎抑制効果についての検討が重要であると考えられた.
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