われわれは、これまでに通過静脈皮弁の生着の有無について検討してきたが、1本の通過静脈が生着させることのできる面積や幅については依然不明であった。それらを定量的に知る事が出来れば、臨床的に有意義であるばかりか、その生着に関する種々の要素を検討することが出来る。実験には成熟白色家兎の両耳を使用し、耳背側の外側縁に軟骨面を移植床とする3.0×3.0cmの1本の通過静脈を含む通過静脈皮弁を作製した。 実験1:中心動脈結紮群(周辺血行不良群) Group 1ーA:Composite graft(n=10) Group 1ーB:Flowーthrough venous flap(n=10)皮弁外側縁を縦走する1本の通過静脈のみを温存。 実験2:皮弁周辺血行に操作を加えない状態において、1本の通過静脈で生着し得る皮弁面積について検討、この際、実験1と対比して周辺血行の静脈皮弁に及ぼす影響についても検討を行なう。 Group 2ーA:Composite graft(n=10) Group 2ーB:Flowーthrough venous flap(n=10)皮弁外側縁を縦走する1本の静脈のみを温存 (検索方法)実験1、2とも、2週間後に皮弁の生着状態を肉眼的、Microangiogram、組織学的に行なう。 (結果)Group 1ーBの結果より、一本の静脈で生着する幅は、1.1±0.45cmであり、Group 1ーBと2ーBとの間に有意差(P<0.05)を認めた。しかしながらその生着する面積(生着率)については有意差を認めなかった。即ち、静脈皮弁の生着幅は周辺からの血行に影響されるが、生着面積(生着率)には影響しない。これは、皮弁自体の静脈のteritoryが曖昧なことや、皮下静脈を血管茎とすることからくる血流量の不安定さから皮弁生着面積の実測値が拡散した事によって統計学的に有意差が出なかったのではないかと考えている。しかしながら、静脈皮弁の生着幅、面積を定量でき、しかも今後の基礎モデルともなるであろう本実験モデルの作製された意義は大きいと考えている。
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