舟状骨月状骨解離(手根不安定症)モデルにおける手関節の圧変動 手根不安定症の代表である舟状骨月状骨間解離モデルを作成し、その圧変動を橈骨手根間関節・手根中央関節で検討し、手根骨の配列異常による圧変化と変形性関節症の発生との関係について検討した。 実験モデルの作成は、新鮮凍結手関節を解凍後、この骨靭帯標本の手関節背側より靭帯を切離し、stage1として背側橈骨手根靭帯の切離、stage2としてstage1に加え、舟状骨月状骨間靭帯の切離、stage3として、stage2に掌側橈骨舟状骨月状骨間靭帯を切離した。このモデルで手関節の圧変動を測定し、次のような結論を得た。 1)橈骨手根関節の圧分布はstage1では比較的広く(接触面積)、stage3になると舟状骨関節面の接触面積が縮小した。加圧部位は橈骨手根関節の背側に移動し、関節辺縁に一致した部位に線状の最高加圧部位が出現した。 2)手根中央関節の圧分布は、stage1で各関節面の中央に加圧部位をもち、同程度の接触面積をしめした。Stage3になると月状骨有頭骨間の掌側に加圧部位をもち、舟状骨有頭骨間の接触面積は減少した。 3)Axlal forceは橈骨手根関節で26.6±15.4%(stage1)、stage3で55.8±12.3%と不安定性の増大とともに月状骨関節面の圧が増大した。手根中央関節では、月状骨有頭骨間の圧変化が中心であり39.0%より65.1%と舟状骨の掌側回転ともに圧負荷の増大を示した。 4)舟状骨の掌側回転による手根不安定症では、圧負荷の集中を認め、この圧変動によりSLACwristなどの変形性関節症への進展が考えられた。
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