研究概要 |
(1)αーTCP水硬性リン酸カルシウムセメントの強度試験 (方法)αーTCP(Ca_3(PO_4)_2)95.1wt%,DCPD(CaHPO_4・2H_2O)4.4wt%,MCPMO.5wt%焼成混合粉体をγ線滅菌,コンドロイチン硫酸ナトリウム(Na_2Chs)10.0wt%,コハク酸ナトリウム20.0wt%,蒸留水70.0wt%混合溶液をろ過滅菌したもの(三菱鉱業セメント社製)を練和させ,直径6mm,高さ10mmの穴を有するテフロン製モ-ルに鋳込み,硬化させて強度試験片を作成した。さらに,モルタル,コンクリ-ト状のせめんとを作成するために同練和物にHAp粉体(粉径10,50,100um)を添加してその補強効果を測定した. (結果)セメントは温度37℃,湿度100%の環境で13〜15分間で硬化した.HAp粉体無添加のセメントの圧縮強度は湿潤状態で24時間静置したものは248.1±37.7Kg/cm^2,3日後には最大圧縮強度384.7±65.5Kg/cm^2に達した.一方,同様の方法にてHApを添加した場合の強度は無添加に比していずれも1/3〜1/5に低下し,モルタル・コンクリ-トとしての改善は見られなかった.現在,短繊維補強複合化に向けて実験を進めている. (2)αーTCP水硬性リン酸カルシウムセメントの生体内移植により適合性試験 (方法)成熱家兎の両側大腿骨遠位端(膝)部からリ-ミングドリルを用いて髄腔を掻爬し,骨髄を洗い流した後,同セメントを注入した.硬化を待ってもとどうりに縫合し,3ケ月経過観察の後,屠殺して同部の硬組織標本(MMA包埋)を作成した.また,比較のために従来から使用されているPMMA骨セメントについても同様の実験を行った. (結果)髄腔内に注入したリン酸カルシウムセメントはその残存量から推定すると硬化前にかなりの量が侵出してきた血液によって洗い流されていた.また,セメント内に血液の混入痕が確認された.摘出した大腿骨は外観上および組織観察の結果から判断して速やかに治癒することが分かった.これはPMMAセメントの場合とは対象的であった.
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