【目的】ペインクリニックで最も頻回に用いられる星状神経節ブロック(SGB)と血管平滑筋への直接的拡張作用のあるプロスタグランジンE1(PGE1)との併用効果について、頭部血流量の面から検討した。 【方法】雑種成犬7頭を用い、ペントバルビタール(30mg/Kg→2mg/Kg時)とバンクロニウム(0.2mg/Kg→0.16mg/Kg/時)で麻酔導入・維持し、気管内挿管下に人工呼吸した(Pα02 100mmHg、PaCO2 40mmHg)、開胸下に、SGB用カテーテルを左頚長筋筋膜内に留置し、電磁流量計のプローブを大動脈起始部、両側の総頚動脈と椎骨動脈に装着した。左頭頂部に骨窓を開け、左内頚動脈領域の脳表面にレーザードップラー血流計(ムーア社製 MBF-3)のディスク型プローブを装着した。左SGB(SGB用カテーテルから1%メピバカイン2ml注入)の前・後で、PGE1を投与し、循環が安定した時点で心拍出量(CO).総頚動脈血流量(Ca-BF).椎骨動脈血流量(VBF)、脳表部血流量(CBF)を測定した。 【結果と考案】PGE1の投与量については先に検討し、血圧に影響せずCa-BFの増加が得られる量として200ng/kg/minを用いた。またPGE1による循環系の反応は投与中止後数分で消失し、繰り返し投与でも再現性がみられた。PGE1投与によって、COは約5%、Ca-BFは約10%それぞれ増加した。左SGBによって、ブロック側のCa-BFは約35%増加し、対側では約10%減少した。SGB後にPGE1を併用すると、ブロック側のCa-BFはさらに約10%増加した。また内頚動脈系の血流量を示すCBFは影響されなかったことから、SGBとPGE1によるCa-BFの増加作用は外頚動脈系での血管拡張効果と思われた。VBFはSGBによって増加するが、PGE1に対する反応はSGBの前後で異なり、SGB前は約10%程度の増加であったのに対し、SGB後はブロック側で30-50%と増加率が大きくなった。このようにSGBによってブロック側の外頚動脈系と椎骨動脈系ではPGE1の血流増加作用が増強されることから、SGBとPGE1持続静注との併用療法は頭部血流障害に対する治療法として有用と思われた。
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