網膜中心動脈塞栓症、脳梗塞など脳循環障害の基づく疾患に対して、障害部位への血流改善と酸素供給のために交感神経節ブロック(星状神経節ブロック:SGB)や高圧酸素治療、炭酸ガス併用酸素吸入などが治療法として用いられるが、これらの治療が脳血流に対してどの程度の効果を及ぼすかについては議論が多いところである。そこで本研究では脳における血流両と酸素供給の面から、脳の血流障害時の治療法として何かが効果的であるかを解明することを目的とした。平成2年度には犬でのSGBの実験法を確立し、SGBと酸素、炭素ガス吸入の併用効果については検討し、その結果、脳血流量(レーザードップラー血流計を用い脳表部で測定)は、SGBによってやや減少すること、脳への酸素供給の面からはSGBよりも酸素と炭素ガスとの併用吸入が有用と思われた。平成3-4年度はSGBとプロシタグランジンEI(PGEI)との併用効果について椎骨動脈血流量(VBF)への影響も含めて検討した。PGEIの投与量は、血圧に影響せず総頚動脈血流量(Ca-BF)の増加が得られる200ng/kg/分とした。PGEI投与によって、心拍出量は約5%、Ca-BFは約10%それぞれ増加した。左SGBによって、ブロック側のCa-BFは約35%増加し、対側では約10%減少した。SGB後にPGEIを併用すると、ブロック側のCa-BFはSGBによる増加量のさらに約10%が上乗せされ、また内頚動脈系の血流量を示すCBFは影響されなかったことから、SGBとPGEIによるCa-BFの増加作用は外頚動脈系での血管拡張効果と思われた。VBFはSGBによって増加し、またPGEIに対する反応は、SGB前は約10%程度の増加であったの対し、SGB後はブラック側で30-50%と増加率が大きくなった。このように、SGB側の外頚動脈系と椎骨動脈系ではPGEIの血流増加作用が増強されることから、SGBとPGEI持続静注の併用療法は頭部血流障害に対して有用と思われた。
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