研究概要 |
低心拍出状態の際に進行するアシド-シスに対して、アルカリ化剤を投与した場合、細胞内酸ー塩基平衡がどの様に変化するかを検討することを目的とした。(方法論の確立)ラットをネンブタ-ル麻酔下に、両側頚動静脈に120cm長のP50カテ-テルをカニュレ-ション、遠隔部位からの血圧モニタ-、脱血、薬物投与が可能なモデルを作製した。また、ラットの体温を恒温に保つため、NMR装置内に循環する温水循環恒温装置を創案した。肝臓のNMR信号を特異的に捕らえるために、ラット上腹部を約1.5cm長に切開、中央に径1.5cmの穴を開けた銅板を、肝臓3葉が集合する所に固定、腹壁組織を銅板により肝臓表面から排除、腹壁筋肉からの信号の混入を防いだ。このモデルを、日本電子製NMR装置(wide bore)内に直立の姿勢で径1cmのsurface coil上に肝臓を固定、31PーNMRを測定した。血圧の測定は、NMR装置内から伸ばしたP50カテ-テルを介しミニポリグラフ(日本光電製RMー6100)にて行った。このモデルにおいて、肝細胞内pH,エネルギ-状態を無機隣、高エネルギ-燐酸化合物の濃度比から算出した。1M重炭酸ナトリウムもしくは、0.5M炭酸ナトリウム溶液を、2mEq/kgの量を5分間で注入、正常状態下及び、出血性ショック(平均血圧60mmHg)下にて、比較した。(結論)燐酸クレアチンの信号は検出できず、本モデルにて、腹壁筋肉からの信号の混入のない肝細胞からの31PーNMRがえられた。重炭酸ナトリウム投与により、正常状態では細胞内pHに大きな変動が出現しないにも拘らず、出血性低血圧状態では、すでに細胞内アシド-シスにおちいっている状態で細胞内アシド-シスが改善しないのみか、むしろ悪化の傾向を示した。これに反して、炭酸ナトリウム投与では細胞内アシド-シスの進行は認められなかった。
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