研究課題/領域番号 |
02670678
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研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
伊藤 祐輔 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (70018307)
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研究分担者 |
広田 弘毅 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (30218854)
山崎 光章 富山医科薬科大学, 附属病院, 講師 (70158145)
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キーワード | 心筋単一細胞 / 洞房結節 / 膜電位固定法 / 膜イオン電流 / ペ-スメ-カ-電位 / ハロセン / エンフルレン / イソフルレン |
研究概要 |
1 ハロセン(H)、エンフルレン(E)、イソフルレン(I)などの吸入麻酔薬は心筋抑制作用を持つことが知られているが、その機序の詳細は明らかでない。今回我々は、ウサギ心筋標本を用い、吸入麻酔薬の心拍数に及ぼす影響について電気生理学的検討を行った。 2 ランゲンドルフ潅流心標本の心拍数に及ぼす影響:ウサギ(1.5ー2.0kg)から心臓を摘出した後、大動脈から逆行性にカニュ-レを挿入して冠動脈を潅流し、ランゲンドルフ潅流心標本を作製した。張力トランスデュ-サ-を用いて収縮反応を等尺性に記録することにより、心拍数を測定した。潅流液(Tyrode溶液)は、95%O_2/5%CO_2混合ガスをbubblingし、35℃に加温して用いた。吸入麻酔薬の投与は、麻酔ガス+95%O_2/5%CO_2混合ガスを潅流液中にbubblingすることにより適用した。潅流心は、毎分60ー100回の安定した自発収縮を示したが、H、E、I(1.0ー2.0MAC)はこれを有意に減少させた。すなわちこれらの吸入麻酔薬は、心筋に直接作用して陰性変時作用をもたらすと考えられた。 3 ペ-スメ-カ-細胞の自発性活動電位に及ぼす影響:ウサギ(0.8ー1.0kg)から心臓を摘出した後、ランゲンドルフ潅流法を応用して酵素(コラゲナ-ゼ)処理することにより、洞房結節ペ-スメ-カ-細胞を分離した。単一吸引微小電極法によりペ-スメ-カ-電位を記録した。H、E、I(1.0ー2.0MAC)は、ペ-スメ-カ-電位の第4相の立ち上がり速度を抑制し、活動電位の持続時間を延長することにより、心拍数を減少させた。 4 ペ-スメ-カ-細胞の膜イオン電流に及ぼす影響:膜イオン電流の測定は、パッチクランプ法を応用した膜電位固定法によった。ペ-スメ-カ-電位の持続時間に影響を与える電流としては、Ca^<2+>電流(I_<ca>)、遅延性外向きK^+電流(I_k)、過分極により誘発される内向き電流(I_f)があるが、今回はI_<ca>、I_kに関して検討した。H、E、I(1.0ー2.0MAC)は、I_<ca>、I_kを抑制した。したがって、吸入麻酔薬によるペ-スメ-カ-電位の延長機序として、I_<ca>、I_kの抑制作用の関与が考えられた。 5 今回の検討から、H、E、Iなどの吸入麻酔薬は、心筋に直接作用し陰性変時作用をもたらすと考えられた。その機序としては、I_<ca>、I_k抑制によりペ-スメ-カ-電位が延長するためと推察されたが、今後I_fに関する検討を追加する必要がある。
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