ハロセンの吸入によってまれに重篤な肝障害が発生する。その原因として脂質過酸化説と免疫説が考えられている。前者の場合、脂質過酸化はハロセンの嫌気的代謝が原因となることを、我々は既に明らかにしている。ハロセンの嫌気的代謝または、ハロセン吸入によって生じる脂質過酸化を抑制することによって、肝障害を予防することが可能であると考えられる。本年度の研究はハロセンの吸入によって生じた脂質過酸化が抗酸化剤によって抑制されるかを、明らかにする目的で計画され次の結果を得た。 (1)ビタミンEの投与により、ハロセンによる脂質過酸化の増加が抑制されることを、モルモットを用いた生体系で明らかにした。さらにハロセン投与によるトランスアミナーゼの上昇も抑制された。 (2)試験管内の実験で、モルモットの肝ミクロソームを用いハロセンによる肝ミクロソームの脂質過酸化をペンタンを指標として測定し、その脂質過酸化を抑制させることを試みた。その結果、15nmol/1のビタミンEで脂質酸化は約半分に抑制されることが分かった。同じ反応系で嫌気的代謝がビタミンEで抑制されないことからビタミンEはハロセンのラジカルによって開始した脂質過酸化の反応を抑制していると考えられる。
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