研究概要 |
本研究は現在にいたるまでその発症機序が明確にされていない吸入麻酔薬ハロセンによる劇症型肝障害に対する一つの解答とも言える免疫学的機序すなはちハロセン代謝産物トリフルオロ酢酸とラット肝ミクロソ-ム中のある種の蛋白質との結合変性蛋白と劇症ハロセン肝炎患者に強い免疫反応の存在が確認されたことにより計画された。その目的は大多数の肝障害をほとんど認めないハロセン麻酔後患者での免疫応答の有無を知ることであった。本年度はまず過去にハロセン麻酔を受けかつ輸血を受けた患者を抽出した。抽出された患者は216名であった。このうち九大輸血部に麻酔後2週間以上経過した時点での血清が確保されていたものは86名であった。次にラットに文献に従ってハロセンを免疫した。セサミオイルと等量混合したハロセンを肝摘出のそれぞれ12,8,4時間前にラット腹腔内に注入した。肝摘出後潅流ホモジナイズ超遠心にて肝ミクロソ-ム粗分画を得た。現在試験的にこの粗分画を還元し、SDSーPAGE展開後にウェスタンブロットしたブロッティングシ-トを作成し患者血清との反応を調査中である。我々は陽性コントロ-ル血清を持っていないので、NIHのグル-プが作成したウサギ免疫TFA抗体を入手できるよう手配中である。したがって、患者血清でのウェスタンブロット結果をラット非ハロセン免疫肝ミクロソ-ムを用いた陰性コントロ-ル、TFA抗体による陽性コントロ-ルと比較し解答を得ることが次年度の計画である。
|