1.臨床研究:(1)対象と方法.原則として組織学的にG3あるいは浸潤癌(T2ー3)であって、転移の無い膀胱癌患者16症例を対象とした。治療は、抗癌剤CDDPの下殿動注と放射線の併用を行い、主に近接効果を検討した。効果は臨床診断での浸潤度と、全摘後の病理組織所見で比較した。なお全摘が施行できなかった症例はTURによる病理組織所見を用いた。また陽子線の追加照射は5例について行った。(2)結果.浸潤度の低下は16例中13例に認め、うち7例には癌組織の消失を認めた。合併症あるいは拒否により全摘を行なわなかったのは5例であるが、2例のみ癌の残存があるもののそれぞれ10ヶ月、8ヶ月と元気に生存している。なお陽子線は5症例に追加照射したが、全例生存していて、うち3例は膀胱を保存している。なお2症例死亡したが、他の原因で死亡したものである。以上良好な結果を得ているので、更に症例のつみかさねと陽子線の導入を積極的に図る予定である。 2.基礎的研究:マウスの浸潤性膀胱癌のモデルを用い、陽子線20Gy1回照射の効果の検討を行った。その結果、照射を行った群の3週間後の平均膀胱重量(〓腫瘍重量)は67.7mgであって、照射を行なわなかった対照群(120.6mg)や照射開始時の対照群(110.0mg)に比べて、有意に重量が軽かった。また浸潤度でそれぞれの群を比較した。深部浸潤癌の頻度は、照射群で8/18(45%)であって、対照群の14/17(83%)に比べて有意に頻度が低かった。以上の結果20Gyの陽子線の照射はマウス膀胱癌の治療として有効であり、ヒトの膀胱癌に対しても有用な治療であることが示唆された。
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