研究概要 |
1、臨床研究: (1)下殿動注と放射線(一部に陽子線追加照射を含む)療法:この治療法を16症例に行い、13例に浸潤度の低下を認めた。尚、膀胱全摘を拒否した5症例中、1例のみ再発した。また膀胱全摘を施行した11例中3例死亡したが、膀胱癌死は1例のみであった。 (2)以上の結果をふまえ、局所に限局した浸潤性膀胱癌に対し、CDDPとMTXを内腸骨動脈より動注と放射線と腫瘍部のみへの陽子線を追加し、膀胱を保存する治療法に転換した。現在までに14症例に本療法を行い、13例にCRを得、全例膀胱を保存した。この内2例は他の原因で死亡し、1例は膀胱内再発のため膀胱全摘を施行した。残りの10例は、まだ観察期間が短いものの再発を認めていない。したがって本療法は非常に効果的であり、膀胱を保存できると思われる。ただし、今後さらに症例の積み重ねと、長期の観察を必要とする。 2、基礎的研究: マウス膀胱発癌を化学療法と陽子線療法後の膀胱保存のモデルとして用い、前癌状能に対するCDDPと陽子線の効果を検討した。85頭のC3H/He雌マウスに0.05%のBBNを飲料水として10週間与えた。その1週間後にマウスを5群に分け、CDDP単独投与群、陽子線単独投与群、CDDPと陽子線併用群、対照群とした。そして実験開始より30週間後にマウスを屠殺して、膀胱の発癌率を比較した。その結果、陽子線単独照射群(4/16,25%),CDDPと陽子線の併用群(6/13,46%)発癌率は、対照群(15/18,83%)に比べて、有意に低くかった。この結果は、臨床における膀胱保存療法の有用性を支持するものと思われる。
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