研究概要 |
【目的】浸潤性膀胱癌の標準的治療法は、膀胱全摘とそれに伴う尿路変更術である。しかし患者の高齢化に伴い、合併する他の疾患や全身状態が悪いために、手術が不可能な症例も少なくない。またQuolity of Lifeの観点から、尿路変更についても再考が必要である。したがって局所浸潤性膀胱癌(T2,T3)に対して、膀胱を保存する治療法の検討を開始した。 【対象と方法】1990年8月より1992年12月までの約2年5ヵ月間に、T2ないしT2かつNO MOの浸潤性膀胱癌21例を対象とした。CDDP50mg/m^2、MTX30mg/m^2を3週間に1回の割合で合計3回、両側の内腸骨動脈より約2時間かけて動注した。またこれと併行して1回1.8Gyずつ合計41.4Gyの照射を、小骨盤腔に行なった。治療終了の3週間後に、CTおよび生検にて、治療効果の判定を行なった。そしてCRを得た場合には、主病巣ないしそれがあった部位に限局して33Gyの陽子線ないしX線の追加照射を行なった。CRを得られなかった症例は、膀胱全摘を行なうことを原則とした。 【結果】CRを得た症例は19/21(90.5%)であった。すなわち非CR(PR)は2例のみで、1例は全摘を行なったが、5ヵ月後に他因死した。もう1例は、経過観察中に癌組織が消失し、17ヵ月後もNEDである。膀胱を保存した症例は21例中18例(85.7%)であって、この内2例は3ヵ月後と4ヵ月後にそれぞれ他因死した。また2例が膀胱内再発をし、その1例は1年後に再発したので全摘を行い、その後の6ヵ月後N EDである。もう1例は5ヵ月後に再発したため、TURで対処したが、その7ヵ月後の状態はNEDである。残りの13例(61.9%)はNEDで、これらの平均観察期間は12.4ヵ月である。 【結論】まだ観察期間も短いが13例の膀胱を保存し得た。またCR率は90.5%と良好な近接効果を得た。副作用も非常に軽度であったので、高齢者に対しても容易に施行できることも考慮すると、本治療法は有用な膀胱保存療法になり得るのではないかと考えられる。
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