研究概要 |
【目的・方法】副甲状腺腺腫をsubtypeに分けるべく、過去3年にわたって組織細胞化学的ならびに分子生物学的に検討してきた((土井直人、森山信男他 日泌尿会誌 62:572-578,1991;Moriyama,N et al.,Acta.Histochem.Cytochem.25:421-429,1992)。今回,1978年から1989年までの当教室の副甲状腺腺腫症例(いずれも副甲状腺機能亢進症)のうち,パラフィンブロックを入手し得た22例と過形成4例,ならびに副甲状腺癌1例について,抗PCNA抗体を用いて副甲状腺上皮細胞におけるG_1期とS期の細胞の比率(%)を検討した。 【方法】24時間から48時間ホルマリン固定後作成したパラフィン切片(5μm)を用いた。標本は脱パラフィン後,ABC法で免疫組織学的検討を行なった。抗体はCoulter社のマウスIgMモノクローナル抗体(Path-Mark PCNA);100倍希釈液を4℃で一晩反応させた。陽性反応物の発色はDABで行ない,核染は1%のmethyl greenで行なった。陽性細胞の比率は副甲状腺上皮細胞を1000個計測して算出した。 【結果】核がDABで均一に染色された細胞を陽性細胞とした。過形成4例ではPCNA陽性細胞は認められなかった。副甲状腺癌1例では2.2%であった。22例の副甲状腺腺腫では16例に陽性細胞を認めた。内訳は5例が1%未満(平均0.4±0.2)であり,11例が1%以上(平均1.7±0.7%)であった。3例が副甲状腺癌と同様に2%台の陽性率であった。PCNAの陽性率(Y)は術前の血清Ca値(X)と弱い相関(Y=-3.8+0.4*X, r=0.44, P<0.05)を認めたが,甲状腺腺腫の重量とは相関がなかった。細胞増殖関連抗体の染色結果でも副甲状腺腺腫は2群ないし3群に細分化し得る傾向が認められた。この結果は一部報告した(Aso, Y., Moriyama, N. et al., Acta Histochem. Cytochem. 25:547-556, 1992)。また詳細は現在投稿準備中である。
|