研究概要 |
副甲状腺腺腫の細分化につき、1)細胞膜及び胞体における糖鎖発現パターン、2)癌遺伝子の増幅および産物の発現、3)細胞増殖能の3点より検討を行った。 1)についてはレクチンを用い、RCA、PNAの染色所見により、RCAーI陽性、PNA陰性およびその逆の2群に分けられ、前者は癌と、後者は過形成と類似の所見であった(Doi et al.,1991)。 2)については、分子生物学的にc-erbB2の増幅を検討し、また同時にその産物に対する抗体を用いた免疫組織化学的検討も行った。癌においてはerbB2遺伝子は4倍の増幅が認められたが、副甲状腺腺腫においても2例(15.4%)で4倍、1例において2倍の増幅を認めた。これらは、組織学的に産物の発現も確認された(Moriyama et al.,1992)。 3)については、細胞周期のS期及びG1期に発現する細胞増殖関連抗原(PCNA)に対する抗体を用いて組織学的に増殖能の評価を行った。PCNAの陽性率は腺腫重量とは相関を示さず、むしろ血清カルシウム値との間に相関を示し、陽性率1%を境とし、2群に分類する事が可能であった(Kurimoto et al.,1993)。 原発生副甲状腺機能亢進症の80%は副甲状腺腺腫に基づくものであるが、癌、過形成との鑑別は通常の病理学的手法でも困難であることが多い。また副甲状腺腺腫の約10%は他臓器癌での所見に類似を示し、電子顕微鏡的観察においても特徴的な所見は得られない(Nagase et al.,1992)。我々はこの様な観点から、臨床的及び病理的に副甲状腺腺腫と診断された症例から得られた検体を用いて細分化の可能性を検討したが、上記の如く、副甲状腺腫は、癌に近い傾向を示すものと過形成に近いものを示す群に細分化が可能であることが示された。
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