生体内(腎不全患者)の腎不全物質の排泄動態を把握するために、臨床腎移植患者尿の高速液体クロマトグラフィ-による分析を行ってきた。しかし現在までのところ腎不全に特有なピ-クは見いだされていない。グルクロマトグラフィ-による分析で急性拒絶反応に特有なピ-クは見いだされた(既報告済み)。また移植された腎機能の推移を予測するために、72時間単純冷却保存腎のViability判定を犬腎移植実験により行った。目的及び方法:ドナ-犬により摘出した腎を単純冷却保存して、移植腎のインピ-ダンスを測定することによって、細胞内外の水分バランスの変動を求め、これからViabilityを推定できるかどうかを検討した。既に腎不全患者において細胞内水分量を測定する方法として、このインピ-ダンス測定法は立証されている。具体的には摘出腎を整理食塩水にて潅流保存し摘出前より4日目まで定期的にインピ-ダンスを測定した。インピ-ダンスは400Hzから3GHzまで周波数を変えて測定し、細胞内液コンダクタンス、細胞外液コンダクタンスをそれぞれ求め細胞内液量、外液量の変化を推定した。400Hz〜1MHzは4電極法、300KHz〜3GHzは同軸端プロ-ブとネットワ-クアナライザ-を使用して測定した。測定原理:生体の電気的特性を細胞レベルで考えると細胞膜は脂質二重層なので電気的にはきわめて抵抗が大きく、厚さが薄いので静電容量がきわめて大きい。生体組織に交流電流を流した場合、低周波では電気的にコンデンサ-である細胞膜に包まれた細胞内液には電流は流れず、細胞外液のみを流れる。一方周波数が高くなると細胞膜の静電容量を介して細胞膜内にも電流が流れるようになる。このことを利用して周波数を変えてアドミッタンスを測定し、細胞内液コンダクタンス細胞外液コンダクタンスをそれぞれ求める。この値は電解質量に比例するので、電解室濃度がほぼ一定ならば細胞内液量、細胞外液量に比例する。結果:潅流直後より細胞外液コンダクタンスの減少、細胞内液コンダクタンスの増加が認められ細胞外液が細胞内へ移動した可能性が示唆された。また保存3日目には周波数によるインピ-ダンスの変化がなくなり細胞膜が破壊されたと考えられた。現時点では測定が安定しておらず、今後追加検討が必要である。
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