平成2年の間に、私は、ある集団検診受診者の中から更年期男子58名を抽出しその内3例に高プロラクチン血症(15ng/ml以上)を発見した。この3例の血中プロラクチン値は、49.9、23.3、14.8ng/mlであった。一方、平成3年1月から島根医科大学中央検査部に集まった血液の中から男子更年期にあたるもの182例を抽出しその血中プロラクチンを測定した。高プロラクチン血症を示した者が11名見つけられた。集団検診を受診した更年期男子の約5%に高プロラクチン血症者がおり、上記中央検査部からのサンプルからは約6%に高プロラクチン血症が発見された。しかし、後者の高プロラクチン血症は多くの例で薬物誘導性であった。また、このグル-プで薬物誘導性でない高プロラクチン血症の患者は重篤な疾病に罹患していることが判明した。 集団検診から見つけられた3例について諸種のホルモン検査を始めたが被検者の個人的な事情により今回は予定の実験を完結させることが出来なかった。 今回の集団検診のデ-タから判った事は、昨年私達が発表(ホルモンと臨床、38:81、1990)した、男子更年期世代の高プロラクチン血症発症率5.6%と今回の集団検診で得られた同世代の高プロラクチン血症発症率5%とが著しく近似している事である。 もうひとつ今年度の実験を進めていて気付いたことは、健常と自分自身を考えている人達、とくに男子更年期世代の人達から高プロラクチン血症を探し出す事の困難さである。
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