研究概要 |
5ーbromoーdeoxyuridine(BrDU)をin vitro3気圧加圧下で組織片中に取り込ませ、抗BrDUモノクロナ-ル抗体を用いて癌細胞の増殖能を表わすS期細胞を染色した。初年度の実験腫瘍モデルを用いた基礎的検討では、以下の結果を得る事ができた。 (1)実験動物より腫瘍を摘出後4時間目まではLabeling Indexは約20%と一定なのでこの時間以内での検体処理が望ましい。 (2)ADMのin vitroにおける90%コロニ-抑制率(IC90)は2時間接触では4ug/ml,4時間接触では1ug/ml,であった。一方これらの濃度ではBrDU標識率にはほとんど影響が見られず、50ug/ml,の濃度で約50%の抑制のみであり、BrDU標識率での90%抑制濃度はコロニ-assayの約20倍であった。(3)CDDPに対する効果は濃度および時間依存性が認められ、コロニ-assayのdose response courveとBrDU assayの結果は酷似しており、2時間接触で約10倍、4時間接触で約5倍の濃度でコロニ-assayと同様なdose response courveが得られた。(4)VCRのBrDU assayでは10μg/ml以下の濃度では2〜4時間の短時間接触ではLIへの変化は少ないため本法は時間依存性薬剤にはあまり適していない。 結論: (1)薬剤との接触時間が短時間であるので、濃度依存性の制癌剤の判定には比較的適しているが、時間依存性の感受性判定にはあまり適していない。 (2)ADMで濃度依存性、CDDPで濃度および時間依存性のdose response curveが得られたが、両者ともin vitroでのcolony survival curveに比較して5〜20倍の高濃度の薬剤接触条件が必要であった。 (3)本法の感受性試験への応用の可能性が示唆されたが今後の研究方向として測定手技の自動簡略化のため組織片を浮遊細胞にしFCMを用いて測定する。PCNA等の新しいS期細胞標識剤を用い標識率の向上に努める。臨床応用に近ずけるためにin vivoの治療成績との相関性、薬力動態との関連性、等が研究されねばならない。
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