研究概要 |
悪性腫瘍のS期細胞の比率は、癌細胞の増殖能を表わす一つの指標になりうる。 初年度はin Vitro3気圧加圧条件下で標識されるS期細胞比率をコントロ-ルとして、薬剤による標識率(L.I.)の抑制率の差を感受性試験として応用する事を目的とした。 具体的にはADR,CDDP,VCRの代表的3薬剤についてin VitroでのL.I.の抑制率を検討した結果、薬剤との接触時間が短時間であるので、濃度依存性薬剤の判定には比較的適しているが、時間依存性薬剤の感受性判定にはあまり適していない事がわかった。また濃度依存性薬剤であってもcolony forming assayのような長期間培養を行なう感受性試験に比べると約5〜20倍の高濃度の薬剤接触条件が必要であった。抗BrDU抗体では通常のS期細胞のL.I.は約20%前後であり、短時間の薬剤接触と培養期間ではS期細胞の抑制率の差を同定する事はかなり難しい。そこで増殖に関連してS期のみでなくG_1後期からS期にかけて合成されるDNA polymeraseー δの補助蛋白であるproliferating cell nuclear antigen(PCNA)に着目し、抗BrDU抗体と比較検討した。 マウス皮下移植腫瘍(MBTー2)を用いた基礎検討では (1)L.I.は抗PCNA抗体では36%,抗BrDU抗体では23%と前者の方が標識率が良好であるので増殖関連細胞の抑制率の差を検討するにはより優れた抗体である事がわかった。 (3)CDDPのLD_<10>量及びその半量である1/2LD_<10>量を担癌マウスに投与した場合、抗腫瘍効果の判定に関して抗PCNA抗体の方がlow doseでも差が出現するので有用性が高いと思われる。 (3)制癌剤のなかにはG_1→S期への移行を阻害する薬剤もあるので今後この両抗体を組み合わせフロサイトメトリ-の解析技術を組み合わせることにより、低濃度薬剤接触でかつ短期間培養であっても細胞回転に及ぼす影響を検討出来る可能性が示唆された。
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