研究概要 |
蛋白分解酵素阻害剤であるウリナスタチン(U)に薬剤性腎障害の軽減作用があるとの報告にもとづいて,シスプラチン(P)による腎毒性発現予防効果についてラットを用いて検討した。腎機能の評価は,Pを投与後5日目のBUN,クレアチニンを指標として検討した。Uの投与量を変えて,P+Uを同時投与したが,BUN,クレアチニンで評価する限りにおいては,UによるPの腎毒性軽減作用は認めなかった。そこでU投与方法の差異により、腎毒性軽減作用の発現が異なるのではないかと考えて,Uを連日投与して検討したが,BUN,クレアチニンによる腎機能の評価では,U非投与群との間に有意の差は認めなかった。同様の実験を,Pの亜急性腎障害実験系において,検討したが,同時の結果であった。Uによる薬剤性腎障害の軽減作用は,Pによる腎障害においては,BUN,クレアチニンレベルの評価では,認められなかった。 一方,Pの腎障害発生のタ-ゲットとして,尿細〓上皮細胞が考えられており,その発生には細胞内小器官中,ライソゾ-ムが重要な役割をしているという報告がある。副腎皮質ホルモンの一種であるメチルプレドニゾロン(M)は,このライソゾ-ム膜を安定化する薬剤とされており,Pによる腎障害ラットに在し,Mを併用投与することにより,BUN,クレアチニンレベルにおける腎機能を有意に予防することが判明した。さらに,MをPより4時間前に投与するとこにより,予防初効果は著明であることが判明した。今後は,Mの腎における薬理動態を追求するとともに,M+Pの腎障害予防メカニズムを解明する目的で,実験をすすめ,臨床的応用も考慮していく予定である。
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