研究概要 |
精巣間質に分布するマクロファージの機能を解明するために,幼若期,性成熟期,老齢期の各発育段階のラットの精巣を,免疫組織化学的および電顕的に検索した。 免疫組織化学によって同定されたマクロファージの出現頻度は,各発育段階で変化し,加令に伴って増加した。すなわち,精巣間質に存在する全細胞に対するマクロファージの頻度は,幼若期で11.5±3.4%性成熟期では11.8±7.2%,老齢期では26.2±6.0%であった。 次にマクロファージとライディッヒ細胞との形態学的な関係を電顕的に検討すると,発育-加齢に伴って著しい変化が認められた。幼若期では,紡錘型のライディッヒ細胞が数個で集塊を作り,この集塊は数層に及ぶ扁平な綿維芽細胞様細胞によって取り囲まれていた。少数のマクロファージはこれらの細胞群の近くに分布していたが,ライディッヒ細胞と直接接することはなく,両者の間には薄い綿維芽細胞様細胞が分布した。しかし時には綿維芽細胞様細胞の間隙に突起を伸ばし,ライディッヒ細胞に接近しているマクロファージも観察された。性成熟期には,多数のライディッヒ細胞が集塊をなして間質内に分布していた。この集塊を綿維芽細胞様細胞が完全に取り囲むことはほとんどなくなり,その結果,ライディッヒ細胞はリンパ腔に露出していた。この発育段階では,マクロフィージはライディッヒ細胞に密接に接触し,時にはライディッヒ細胞の集塊の中に埋れるように存在した。老齢期になると,ライディッヒ細胞は萎縮し,細胞数も減少した。これらの細胞に接して,リポフスチン顆粒を多数含んだマクロファージが観察された。 これらの所見は,精巣間質マクロファージが,ライディッヒ細胞を取り囲む微細環境の発育や加齢に伴う変化に,深く関わっていることを示唆するものであり,両細胞は相互に作用しつつ精巣機能の発現-維持に働いていると推測された。
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