研究概要 |
1.正常腎組織におけるヘキソサミニデースCの発見 ヒト正常腎組織のホモゲネートを2万Gにて30分遠心し、その上澄をセルロースアセテート膜に180Vにて電気泳動し、サンドイッチ法にてNAG活性部位を染色することにより、従来の報告とは異なる染色バンドが得られた。最も陽極にあるものはデンシトメトリーでの活性測定では5〜8%の値を示し、中央に存在するバンドは70〜75%の値を示し、最も陰極よりのバンドは20〜25%の値を示した。最も陽極よりのバンドは精漿を検体とした場合には検出されないバンドであった。本活性はコンカナバリンAには結合しない分画に存在し、その至適pHは6〜7と他のNAGより中性に傾いていた。本活性は基質としてMCP-NAGを良く代謝するが、ガラクトサミナイドは代謝せず、ヘキソサミニデースC(HEX C)と呼ばれるアイソザイムと同様の性質を示した。これは胎性期に高いとされる酵素であるが、ヒト腎でも発現していることが示された。 2.腎細胞癌組織におけるNAG Aの酵素学的特性について 腎細胞癌組織よりNAG Aを部分精製し、その酵素学的特性を腎正常組織のそれと比較し検討した。Km値,至適pH、金属イオンに対する感受性は両組織由来に差が見られなかった。コンカナバリンAとWGAを用いたアフィニティーカラムでは両群に差が見られた。癌組織由来では二枝複合型糖鎖およびフコースを持たない混成型と高マンノース型が有意に増加するが、フコースを有する混成型は有意に低下することが示された。これらの結果はNAG Aの糖鎖の検討は腎細胞癌の診断的指標になり得ることを示唆したものと思われた。
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